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「夏の思い出」
よほど珍しいのだろう。 都会育ちの甥っ子は、今朝がた二人で採ってきたカブトムシを少しも離そうとしない。 先程からは角にミニカーを結び付けて引かせている。私もよくやったものだ。 夏休みを利用してこちらにやって来てきょうで三日。 近所の子供たちとは早くも顔馴染みのようだ。 カブトムシを虫かごに入れ、一緒に遊びに行ってくると飛び出していった。 もう日は高いが、虫採り名人の子でもいればもう1〜2匹かごに仲間を増やして帰ってくるだろう。 姉が井戸で冷やしておいたスイカを切ってきた。 「やっぱりいいところよねぇ。ここは。」 「ああ。義兄さんも来れればよかったのにな。」 「あの人は仕事ばっかりで・・・。どうも会社もよくないみたい・・・。」 「そうか。どこもたいへんなんだな。 でもさ、いざとなったらこっちに来たらいいじゃないか。この家なら3人ぐらい増えたってわけはないし、畑の一つも手伝ってくれたらそれでいいんだけどなぁ。」 「ウフフ。あの人が何て言うかしら。 でもホント、タンペイのあんなにうれしそうな顔、久しぶりに見たわ。」 裏山から聞こえる蝉時雨に交じって、金属バットの快音が響く。 我が母校は甲子園大会には行ったことがない。今年も早々に負けてしまった。 どうやら二年生が本格的に練習を始めたようだ。 麦わら帽を頭にのせ、畑へと向かう。 きょうも、暑くなりそうだ。 |