「夏の思い出」
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前回のお話
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「ね、おぼえてる?」
「ん? ああ・・・」
忘れるはずなんかない。ここはキミと初めて出会った場所。
小学生の頃、都会から越してきたボクは、どうしても彼女に虫採りも
木登りもかなわなかった。いや、近所の男子連中でも彼女に勝てる
ヤツは少なかったのだ。
いつも白い歯を出してケラケラ笑い、誰よりも目立っていた。

そういえば彼女の肌はいつからこんなに白くなったのだろう。


「タンペイちゃんはさ、この枝に登るのもおっかなびっくりだったよね?」
「もう!『ちゃん』はやめろって言ってるだろ!」
制服のスカート姿もお構いなしに、彼女はあの頃の手つきのまま、スルスルと
一番低い枝まで登ってしまった。腰掛けて脚をブラブラさせている。
「あたしのカブトムシとタンペイちゃんのクワガタを決闘させた時もさ、
タンペイちゃん一度も勝てなかったよね?」
「カブトとクワガタはそういうことになってんだよ!」

「この枝もこんなに低かったんだ これなら飛び降りても平気だよ!」
「危ないよ! それに・・・」



バサッ!

「キャッ!」
勢いよく飛び降りた彼女。短く丈を詰めたスカートは当然翻って捲れ上がる。

「・・・・・見たでしょ?」
「・・・・・見てない」
「ウソ!絶対見た!!」
「そ、そんなとこから飛び降りるからじゃないか!」
「ほら、やっぱり見た!!」
「うるさいな!お前のなんか見たってどうもしねえよ!!」

「!・・・」「・・・・・」
嫌な沈黙。
いつもこうだ。大事なことは一つも言えず、そのくせ余計なことばかり・・・
たまらず彼女から目をそらす。今までは聞こえなかった蝉の声がひどくやかましい。

背後で足音が聞こえた。
彼女が行ってしまう!思わず振り返った目の前に・・・



満面の笑みを浮かべた彼女の顔!

「かきごおり!!」
「えっ!?」
「かきごおりおごってくれたら許してあげる!!」
「な、なにを!?」
「エヘヘ。ほらほら先行くよ!!」

軽快な足取りで丘を駆け下りていく彼女。
ボクは今日こそ伝えるはずだった言葉をまた心のポケットにしまい込む。
今まで何度繰り返したことだろう。


「まあ、いいか!」
胸の中に夏休みの宿題を一つ増やし、ボクも町へと駆け出した。
とびきり熱い太陽と、どこまでも高い青空が、きっとボクに力をくれる!

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作品名:「夏の思い出」
制作: build ◆T5aSKTck5s
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